知ってどうする、学んでどうする豆学コーナー
第1回:華麗なる乾燥豆の世界
第2回:ひよこ豆のプロフィール
第3回:ふしぎな豆たち



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第1回:華麗なる乾燥豆の世界
地味な乾燥豆もよくよく眺めればみんな個性的。まずは名前をおぼえよう!

ひよこ豆
ひよこ豆の解説は「第2回:ひよこ豆のプロフィール」へ。

ひよこ豆

黒ひよこ豆
いんげん豆
日本には17世紀に隠元和尚が伝えたといわれているが、真偽のほどは不明。原産はアメリカ大陸だが、16世紀以降は世界中で栽培されている、もっとも「コスモポリタン」な豆である。メキシコなどでは「フリホレス」、ブラジルでは「フェイジョン」など、新大陸では主食に近い重要な食べ物。色や大きさもさまざま、模様のあるものなどヴァラエティーに富んでいる。たとえば同じ「中粒の赤いいんげん豆」である金時豆とキドニービーンズでは、姿も味も微妙に違うように、地方性が感じられる。

←手忙(てぼう)
白色、やや小粒。白餡の材料などに使われる。
白いんげん豆
白色、やや平らな大粒。大福豆とも呼ばれ、煮豆や甘納豆などに。
とら豆
半分が褐色のまだら、もう半分は白色という可愛らしい豆。名前の由来はやはりトラの模様か。うずら豆を改良した高級品種である。
うずら豆
淡い褐色に茶色のまだら、ウズラの卵に似ている。皮は厚めで煮豆によく用いられる。輸入豆の「ピントビーン」はやや小さめ。ブラジルの「カリオカ・ビーン」もこいつの仲間。
金時豆
赤紫色。煮豆や甘納豆でおなじみ。「金太郎」こと坂田の金時の赤い肌が名前の由来らしいが、そう考えるとちょっと気持ち悪い。北海道十勝地方の旧大正村(現在帯広市大正)に由来する「大正金時」が代表的。
黒いんげん豆
日本ではあまり見ない黒いいんげん豆。英語ではblack beans。大粒、小粒ともに南米ではポピュラー。ブラジルではフェイジョアーダという黒い煮込み料理がある。
キドニービーン
赤インゲンマメ。上の金時豆とほぼ同じ種類である。「キドニーkidney」は腎臓の意味。確かに似ているが……。「チリビーンズ」「チリコンカルネ」などの料理でよく使われるのがこれ。
花豆
かなりでかい豆。花が赤いために「紅花いんげん」ともいわれるが、いんげん豆とは遠い親戚関係にある。やはりアメリカ大陸が原産。インゲン豆よりも低温を好むため、日本では長野の高冷地や北海道で栽培されている。最初は鑑賞用として栽培されたため「花豆」と呼ばれる。ほくほくとしていて風味もよく高級品種である。

紫花豆
おもに長野県で栽培。
白花豆
おもに北海道で栽培。
小豆・ささげ・緑豆
マメ科・ササゲ属に属する豆たち。全体に小粒のものが多い。アフリカ、地中海からアジアまで広く栽培されている。他にもやしに使われるケツルアズキ(マッペ)など。

小豆(あずき)→
餡子でお馴染みの小豆は皮が固くゆでるのが大変。原産は中国。粒の長さ4.8mmより大きいものを「大納言」、小さいものを「小納言」と呼ぶ。白い小豆もあるらしい。

緑豆
(リョクトウ)
小豆より更に小さな豆。青小豆とも。インドではムング(mung)。春雨やモヤシの材料として知られるが、さまざまな豆料理にも使われる。中国では冷やした緑豆ぜんざいも。

ささげ(大角豆)
赤飯に使われるこの豆はアフリカ原産。よく小豆と混同されるが、丸い「ヘソ」の形で見分ける(小豆は縦に長い)。ダルマにも似ているので「だるまささげ」とも。


←黒目豆
英語ではブラック・アイ・ビーン(black eye bean)、イタリア語ではファジョーリ・デロッキオ(fagioli dell'occhio)。アフリカ原産のささげの仲間。

んどう(豌豆)
英語では単に「ピー(peas)」とか「グリーン・ピー(green peas)」。原産地は西アジアといわれ、歴史の古い豆。日本では莢豌豆(さやえんどう)やグリーンピースのイメージが強いが、乾燥豆も食べられている。とくに旧ソ連、中国で生産が多い。インドでは挽き割りにしたもの(ダル)がスープなどによく使われる。中国のトウミョウ(豆苗)もえんどうから作られる。
青えんどう(左)と赤えんどう
大豆
原産は中国。独特の豆臭があり、固く食べにくい、などの事情から、東アジアでは大豆の加工技術が発達した(豆腐、味噌、醤油、納豆、……)。ときに大豆もそのまま食べる日本人は変わりものともいえるし、国産大豆はそれだけ美味しいともいえる。欧米での栽培は歴史が浅いが、採油、飼料用に二十世紀から急増、現在はアメリカ合衆国が第一位の大豆生産国。

(左から)青大豆黄大豆黒豆
青大豆は枝豆用を完熟させたもの。もっとも一般的なが黄大豆には「鶴の子」など高級品種も。黒豆は丹波産が有名である。
その他
レンズマメ
日本では「扁豆(ヒラマメ)」。英語ではレンティル(lentil)、インドではやや小型のマスル(masur)。西アジア原産で、『旧約聖書』に「レンズ豆」のスープが登場するほど由緒ある豆。円盤状のこの豆の形がその名の由来……というのは間違いで、この豆に似ていることから「レンズ」の名前がついたそうで、レンズよりも豆のほうが古く由緒正しいとのこと。小さくて茶色のものが多いが、緑色ぽいものなど色はさまざま。1cmくらいの大きなものもあるようだ。よく店でみかけるオレンジ色またはピンク色のレンズ豆は皮をむいたものだ。



キマメ
(樹豆)
英語ではピジョン・ピー(pigeon pea)、インドではアルハール(arhar)、トゥル(tur)など。原産はインド。インドではヒヨコマメに次ぐほど栽培されているようだ。白と黒のものがあるらしいが、挽き割りにしたダルしか見たことがないので、イラストはまだなし。


←リママメ(lima bean)
新大陸系の豆。名前はペルーの首都リマにちなんだもので、日本ではライマビーン、ライマメなどやや名前に混乱がある。原産地は南米。世界中で食べられているのに、なぜか日本にはほとんど入ってこない豆らしい。本には「シアン化合物の濃度が濃い」「青酸を含む系統がある」などの記述があるが、詳細は不明。白色のものが多く大小さまざまだが、クリスマスライマビーンズchristmas lima beansなど模様のついたものもある。


ソラマメ(空豆、蚕豆)
原産は西アジア。英語でfava、faveなどと呼ばれるが、もともとはラテン語で「豆」の意味。日本では若い豆を塩ゆでにするのが一般的だが、乾燥豆としても重要。挽き割りにした「ダル」もある。エジプトではターメイア(豆コロッケ)の材料となる。ターメイアとファラフェルはほぼ同じ料理だが、呼び名については現在調査中。ところで地中海には昔から「ソラマメ病」という病気が知られている。遺伝病ともいわれるが詳細は不明。ソラマメに関してはさまざまな逸話やタブーがあるらしく、実に興味深い

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